2024/12/15 03:38
赤い色は古来より邪気を払うと信じられてきました。
赤は、太陽の色、炎の色、血の色であり生命を象徴する大切な色でした。
例えば鳥居や神社の社殿の色などがそれです。
江戸時代には、疱瘡や天然痘など恐ろしい病気に立ち向かうための護符として赤摺りという赤い色で摺ったお守りが流行しました。
厄除けの達磨やお守りなども赤で作られていました。
また還暦に赤いちゃんちゃんこを着ます。これは、干支が一周するのが60年かかり、子供に戻ると考えられていました。
また長寿を願い邪気を払うためともいわれています。
実はお正月も厄除けとして赤い実を飾ります。
お正月に飾る赤い実6選
千両・南天・万両・カラタチバナ・藪柑子・アリドオシ
千両
千両はもともと仙蓼(せんりょう)といわれ、漢方薬でした。
日本・韓国・中国などの広葉樹林の林床に自生している半日陰を好む植物です。別名草珊瑚といわれておりました。
江戸時代の生け花の本「立花大全」には「仙蓼」の名前で登場します。
赤い実が厄除けになると信じられてきましたが、
実際にも漢方薬として九節茶などとよばれ、抗菌、消炎、去風除湿、活血、止痛の効能があるとされています。
冬場に赤い実身をつけることから、お正月の縁起ものとして扱われるようになります。
そしてその名にちなんで語呂合わせで「千両」といわれるようになりました。
南天
南天は冬の寒々としたなかでも赤い実をつけ丈夫であることからやはり厄除けとして観賞用に植栽されました。
そのほか語呂合わせから「難を転ずる」ということに通じ、南天を鬼門や厠に植えるとよいとされていました。
また南天のど飴のように、実は生薬として効能があり咳やのどの鎮痛に使われてきました。
さらに葉には殺菌効果があるといわれ笹の葉同様お弁当などに用いられてきました。
ただし、アルカロイド系の毒素も含んでおり、多量接収は中毒の原因となります。
お正月には、実と葉が縁起物として扱われ生け花の材料として使われました。
厄除けになると信じられていた南天の硬い茎が箸にされてお食い初めのときの赤ちゃんのお箸にもされました。
万両
万両はお正月縁起植物である千両よりも実が大きく多く付く縁起のよい植物とされ「万両」と名付けられました。
大藪柑子などといわれる別名があるように、藪柑子と同じサクラソウ科ヤブコウジ属の植物ですが、100センチくらいになる植物です。
千両や南天同様、正月の頃に赤い実をたくさんつけるため厄除けになると信じられました。
また、白い実がなったり葉の形状が縮れたり、白府が入ったりとしてバリエーションができるため江戸時代に盛んに栽培された古典植物として現代に伝わっています。
千両のように成長が早いわけではないので、切花としてではなく鉢物として流通することが多く、お正月に縁起物として扱われます。
カラタチバナ
唐橘は、別名百両といわれ、千両よりも赤い実がすくないことからこのように呼ばれています。
しかし、江戸時代に斑入りの葉の品種や変わり種などが作出され非常に高値で取引されていました。
もともとは、中国から百両金という植物(何を指すのかは不明)の名前が伝わり、当時高値で取引されていた唐橘を「百両金」と言ったことからカラタチバナを百両というようになりました。
これも、千両万両とともにお正月の縁起物として扱われていました。
ヤブコウジ
別名十両といわれています。藪柑子はその名の通り、藪に生えている柑橘の小さく可愛らしいものという意味で名付けられたと考えられています。カラタチバナよりも数が少いですが赤い実が生ります。赤い実は、金運上昇や金の生る木、繁栄の意味がある柑橘類の植物になぞらえて、江戸時代の園芸ブームの時に流行しました。また、ヤブコウジの花の形が、柑橘類の花に似てることから、柑の字が当てられたといわれています。
グランドカバーとして庭で使われたほか、斑入りや葉の形などに変種が現れ、高値で取引されました。そして、高値で取引されたヤブコウジは「紫金牛」と呼ばれて、「金牛」を「こうじ」と読ませたようです。そのほか、赤い実がつくおめでたい植物として扱われていました。これはやはり赤が邪気を払うもしくは厄払いとなると考えられていたようです。今でも古典園芸植物として扱われております。
アリドオシ
別名一両といわれています。アリドオシは、とげが鋭く細いため小さなアリをも突き通す、という意味から。もしくは、低く這うように自生しているアリドオシの下をアリしか通れないという意味でつけられたという説があります。これは、江戸時代の語呂合わせで、お金持ちのことを「千両、万両、有り通し」と言っていました。この「千両、万両、有り通し」は金運上昇の縁起の良い言葉遊びとして流行しました。それにちなんで、このアリドオシのことを、「一両」と呼ぶようになったのです。ちなみにアリドオシも赤い実が生ります。
千両の扱い方
このようにして、冬に赤い実が生る植物は、松竹梅同様に寒さに強く神々しいまでに赤い実を実らせ、また赤い実は厄払いの効果があると信じられてきたため、お正月の縁起物として扱われてきました。
さらに変異株などの高値に取引されたりとさらに拍車がかかり今日まで伝わります。
千両は特に草丈も出て、水あげもよく、生け花で多く使われたため、生産量が拡大しました。
千両は、お正月の縁起花材としてお花屋さんで松と共に売られています。
水あげは、一般的には切り戻した茎を叩いてお湯であげます。
長く楽しむためには、等級の良いものほど実が落ちずコンデションを保つことができます。
水を非常に好むため、水位が少ないと水下がりの原因になります。
マツなどと生ける場合は、松も水を好むため、うっかりして花瓶の中の水がなくなってしまうことがありますので水位の低下には気を付けておきましょう。
以上でお正月のお話は終わりです
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