2025/07/10 12:52

お花の話をするとき、そのお花がどこからやってきたか?

そんなことを考えるのは、お花好きの病をこじらせてしまったからでしょうか?

この世の中に沢山の植物が生まれ、そして絶えてきました。
そんななか、太古の昔から脈々と受け継がれている植物もあります。
またその環境に適応して進化発展をしてきた植物もいます。

ヒマワリは、そんな植物のなかで歴史的にはそんなに古くない、
いや我々の文明に知られることなくひっそりと生きていた植物なのです。
ヒマワリの存在は、紀元前1500年頃までさかのぼります。
自生地は、北アメリカと推測されます。
推測される、というのは実はよくわかっていないんです。
北アメリカに暮らすネイティブアメリカン(アメリカ大陸の原住民)が、そんなはるか昔からヒマワリを栽培していた痕跡があるのです!
ヒマワリは、太古の昔から種を食用としておりました。
殻を砕いて粉にひき、パンや食料としていました。
ですから、ネイティブアメリカンの人たちが移住した先でも栽培されていたため、
「ここだよ!」っていう本来の自生地がわからなくなっています。

そして、3千年を代々受け継いでいたネイティブアメリカンとヒマワリたちは、
1500年ころ、スペインによってスペインのマドリードへ運ばれました。
南アメリカのインカ帝国では、13世紀から16世紀のスペインが侵攻してくるまで、「太陽の花」「太陽の化身」などと呼ばれ、インカ帝国の巫女はヒマワリを模した装飾品を身につけていました。太陽神を崇めるインカ帝国では大切に扱われていたのです。

マドリード植物園でさらに100年ほど管理されて、1600年初頭頃に初めてスペインから持ち出されます。

イギリス、ロシア、フランスへ持ち出されました。
当時、「分類学の父」と呼ばれるスェーデンの博物学者であるカール・フォン・リンネの著作「植物の種」1753年にも紹介されます。

世界各国にも次々と伝わり、日本にも17世紀に紹介されます。『訓蒙図彙』には「丈菊、俗に言ふてんがいくわ(天蓋花)、一名迎陽花(げいようくわ)」として載っいる。

日本では。「丈菊(じょうぎく)」として伝わり、日輪草や日廻り草、日向草とはそののちつけられた名前で、向日葵(ひまわり)に名前が落ち着きます。

ひまわりはマーガリン!?

イギリスでは主に観賞用としても研究されますが、ロシアにおいてはその種子の食用について発展します。
ロシア正教会において、聖枝祭(キリストが捕らえられて十字架に括り付けられて死んでから3日間で復活することを祭る日)の6日間の期間、食物規制をするのですが、その規制項目に食用としてのひまわり種がリストになく、その際に爆発的に普及しました。
そのため、ロシアでは食用としての認識が非常に高いのです。
ひまわりには、特に油を含んでおり、食用油としてのひまわり油が19世紀には大量生産可能になりました。
ロシアではひまわり油の含有量を増やす品種改良がすすみました。
当初は油脂成分が30%程度だったものが45%程度となります。
その後、アメリカでさらに改良されて、油脂成分が80%程度まで含む含有率となるまで改良された。
栄養的には、カロリーが高く、疲労回復に役立つビタミンやミネラルが豊富です。
そして、葉酸や鉄分、食物繊維なども含まれていて、コレステロールがないという特徴もあります。
そういった意味では、かなり有用な食物といえます。
アメリカのメジャーリーグでは選手がヒマワリの種をかんでいるのも、うなずけます。
ひまわり油は別名サンフラワー油として、マヨネーズやサラダドレッシング、マーガリンの原料となります。
マーガリンはバターの代替品として、乳脂のかわりに植物性の油脂を代用として使っています。
そもそもマーガリンは、バターが非常に高価であり、食品加工材料として発展しました。
19世紀初頭、フランスの化学者・ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールが、動物性脂肪の研究からマルガリン酸を発見しました。
それを19世紀の終わりに、にナポレオン3世の治世、軍用と民生用のためにバターの安価な代用品をフランス人のイポリット・メージュ=ムーリエが牛脂に牛乳などを加え硬化したものを考案して、オレオマーガリンという名前がつけられました。
のちに省略してマーガリンとなりました。
植物性のマーガリンは、牛脂にかわり、植物油脂を使用します。発酵乳、塩、ビタミン類とをかき混ぜることによって乳化させ作るのです。その油脂成分をひまわり油から作られるものがあったのです。
マーガリンの完成は当然19世紀までまたねばなりませんが、
そういう栄養的な要素はすでにそんなひまわりの食用としての性能を古くはネイティブアメリカンの人たちはすでに活用していました。
ひまわりの種はすでに3千年前から有用とされていました。


絵具としてのひまわり

ところで、油絵の絵具には、乾性油と揮発性油があるのをご存知ですか?
乾性油は空気中で徐々に酸化することにより固まる油のことです。
揮発性油は空気中に揮発してゆく油の事です。
油絵では、絵の具を固めるのには、乾性油を使用し、溶かしたり薄めるには揮発性油を使います。
その乾性油にじつはひまわり油が使われるのです。
油絵に使う乾性油の代表的な植物は亜麻という植物ですが、ケシ油、紅花油とならんでひまわり油が使われます。
ヒマワリの中に含まれる不飽和脂肪酸というのが、乾燥を早くする特徴があります。
特に中世から描かれるロシアやウクライナの聖像画はひまわり油を多く使用しております。
とくにウクライナ地域ではひまわり油のシェアも正解中の半数以上となっており盛んです。
こうして、ひまわりから採れる油は、食物だけでなく歴史的文化にも大きく寄与していました。

ということで、ひまわりのお話はいかがだったでしょうか?
現代の日本では切り花として、皆さんの夏のギフトの定番商品になっていますが、今回は別の一面をご紹介してみました。
また次回もヒマワリのお話をしたいと思います。
今回はこれにて!